研修動画は、目的設計、構成作成、撮影、編集、配信の流れを押さえれば、初心者でも制作できます。企業や医療・介護現場など、日々の業務と並行して教育体制を整える必要がある場面では、作り方を整理して理解しておくことが大切です。
本記事では、研修動画の作り方を6つのステップで解説し、学習効果を高めるコツや内製・外注の判断基準、LMSで配信・管理を効率化する方法も紹介します。
この記事でわかること
研修動画の作り方で避けたいことは、準備不足のまま撮影を始めることです。制作前に目的や受講対象を整理しておくと、撮影後の手戻りを防ぎやすくなります。
研修動画制作の第一歩は、「なぜこの研修が必要なのか」という組織課題の整理です。たとえば訪問看護ステーションであれば、「新人スタッフの感染対策の知識を標準化したい」「法定研修の受講記録を確実に残したい」など、具体的な課題から出発しましょう。
「誰に」「何を」「どのレベルまで」習得してもらうかを明文化することで、制作途中の方向性のずれを防げます。目的が曖昧なまま進めると、完成後に「誰に何を伝えたいのかわからない」動画になるおそれがあります。ターゲットの職種・経験年数・前提知識を具体的に書き出すことが重要です。
目的とターゲットが定まったら、次は動画の形式を選びます。研修動画の主な形式は以下のとおりです。
| 形式 | 特徴 | 適した研修内容 |
|---|---|---|
| 講義形式 | 講師がカメラに向かって解説する | 制度改定の解説、マネジメント研修 |
| スライド録画形式 | PowerPointにナレーションを付けて録画 | 業務フロー説明、加算の算定要件解説 |
| マニュアル形式 | 実際の作業手順を撮影する | 吸引手技、機器の操作方法 |
| オンライン会議録画 | ZoomやTeamsでの講義を録画する | 外部講師を招いた研修、カンファレンス |
研修の内容と受講者の学習スタイルに合った形式を選ぶことで、制作しやすく、受講者に伝わる動画にしやすくなります。初心者にはスライド録画形式やオンライン会議録画が取り組みやすいでしょう。
形式が決まったら、動画の構成とシナリオを作成します。1本の動画の基本構造は「導入(目的の提示)→ 本編(解説・実演)→ まとめ(要点整理)」の3部構成が基本です。
台本を一字一句書く方法もありますが、講師が台本を読み上げる形式は不自然になりがちです。要点を箇条書きにした「話の骨格」を用意し、自然に話す形式のほうが受講者に伝わりやすい動画に仕上がります。図表やテロップで補足する箇所も、この段階で決めておくと撮影・編集がスムーズに進みます。
シナリオが完成したら撮影を始めます。社内研修用であれば、スマートフォンと三脚でも実用的な研修動画を撮影できます。撮影時に特に注意すべきポイントは以下のとおりです。
なお、研修動画では高画質であることが必ずしも最優先ではありません。電子カルテや記録システムの操作研修では、文字の視認性を確保するために1080p(フルHD)での収録が望ましい場合があります。一方、講義型の研修であれば720p(HD)でも内容を伝えられるケースがあります。音声の聞き取りやすさは画質以上に学習効果に影響するため、音声品質への投資を優先してください。
撮影した素材を編集し、研修動画として仕上げます。編集で意識すべきポイントは、テンポと視認性の向上です。
初心者には、無料編集ツールやテンプレートの活用がおすすめです。テンプレートを使うと、見やすい構成やテロップを整えやすくなります。最初はテンプレートを活用しながら、必要な部分だけ少しずつ調整する方法が効率的です。
編集が完了した動画は、適切なプラットフォームにアップロードして配信します。社内限定で配信する場合はLMS(学習管理システム)やクラウドストレージ、広く公開する場合はYouTubeなどの動画共有サービスも選択肢になります。
配信後は、未受講者の状況、テスト結果、レポート内容を確認し、次回の研修設計に反映します。社内限定で継続的に研修動画を運用する場合は、受講者への案内、期限前のリマインド、受講履歴の記録まで管理できる仕組みを整えておくことが大切です。研修動画は、配信後の受講状況を確認して改善することで継続して運用しやすくなります。
研修動画の作り方の基本的なステップを理解したうえで、学習効果を高めるための5つのコツを紹介します。訪問看護の現場では、短時間で確認できる構成にすることが視聴継続につながります。
60分の研修内容を1本の長時間の動画にまとめるのは避けましょう。テーマごとに10〜15分前後の短い動画に分割することで、受講者は集中力を保ちやすくなります。
短い動画にはほかにもメリットがあります。受講者は自分のペースで学習を進められ、必要な部分だけを繰り返し視聴することも容易です。また、制度改正や業務変更があった際に該当する動画だけを作り直せばよいため、更新コストも抑えられます。訪問看護の現場では移動時間の合間に視聴するケースも多いため、1本を短くすることは実用性の面でも重要です。
講師が話し続けるだけの動画は、受講者の集中力を維持しにくいものです。スライド内の図表やグラフ、簡単なアニメーションを組み合わせると、視覚的に理解が深まります。
ただし、装飾が過剰になると逆効果です。図表やアニメーションはあくまで情報伝達を補助する手段であり、視覚要素が多すぎると、受講者の注意が分散してしまいます。1つの画面に盛り込む情報量は控えめにし、「1スライドにつき1メッセージ」を目安にしましょう。
研修動画は一方通行の情報伝達になりやすいという弱点があります。この課題を補うためには、動画の途中や視聴後にクイズや演習を組み込む方法が効果的です。
たとえば「ここまでの内容で正しいものを選んでください」という確認テストを挟むことで、受講者は能動的に考えながら学習を進められます。クイズや演習を取り入れると、受講者が内容を振り返る機会が増え、知識の定着を促しやすくなります。動画視聴後に簡単な設問やレポートを用意しておくと、理解度を確認しながら次回の研修改善にもつなげやすくなります。
研修動画では、映像の品質以上に「言葉の伝わりやすさ」が学習効果を左右します。専門用語を多用しすぎず、ターゲットの知識レベルに合わせた表現を選びましょう。
| 注意点 | 改善策 |
|---|---|
| 一文が長すぎる | 1文を40字以内に収め、区切りをつける |
| 早口になっている | 普段の会話よりもゆっくり、一定のテンポで話す |
| 専門用語が多い | 初出の用語は平易な言葉で補足を入れる |
| 周囲の雑音が入る | 外付けマイクを使用し静かな環境で収録する |
ナレーションの聞き取りやすさは、受講者の視聴継続率に影響します。収録後は必ず自分で再生して確認し、聞き取りにくい箇所がないかチェックしてください。
完成した動画は、公開前に実際の受講者に近いスタッフへプレビューを依頼しましょう。制作者本人は内容をよく理解しているため、「初めて視聴する人にとってわかりにくい箇所」に気づきにくいものです。
実際のターゲットに近いスタッフ2〜3名に視聴してもらい、「内容が理解できたか」「テンポは適切か」「音声は聞き取りやすいか」といったフィードバックを集めます。公開前の第三者チェックを行うと、初見では伝わりにくい箇所を見つけやすくなります。管理者・新人・現場スタッフなど、立場の異なる2〜3名に確認してもらいましょう。
研修動画には、教育内容を標準化しやすい一方で、制作の手間や双方向性の不足といった課題もあります。内製する動画、既存コンテンツで代替する動画、外注する動画を分けて考えましょう。
対面研修では、講師のコンディションや受講者の参加タイミングによって教育の質にばらつきが生じがちです。研修動画であれば、すべてのスタッフが同じ内容・同じ品質の研修を受けられるため、組織全体の知識・スキルレベルを均一に底上げできます。
特に複数拠点を持つ訪問看護ステーションでは、拠点ごとの教育内容の差が課題になりやすいものです。動画化することでこの課題が解消され、新人教育や法定研修の標準化にもつながります。
訪問看護スタッフはシフト制の勤務が多く、全員が同じ時間に集合研修に参加することは容易ではありません。研修動画なら、各自の都合に合わせていつでもどこでも受講できます。
たとえば訪問先への移動時間や、自宅でのすき間時間を活用した学習が可能になります。訪問看護のようにスタッフの勤務時間や訪問スケジュールが分散しやすい現場では、集合研修だけに頼らず、各自が学びやすい形式を整えることが重要です。短時間で視聴できる動画に分けておくと、業務の合間にも学習を進めやすくなります。
対面研修には、講師の人件費、会場費、交通費、資料印刷費などさまざまなコストが発生します。研修動画は一度制作すれば繰り返し利用でき、同じ内容を毎回対面で実施するより運用負担を抑えやすくなります。
| コスト項目 | 対面研修 | 動画研修 |
|---|---|---|
| 講師費用 | 開催ごとに発生 | 初回制作時のみ |
| 会場費 | 開催ごとに発生 | 不要 |
| 受講者の移動費 | 参加者分発生 | 不要 |
| 資料印刷費 | 参加者分発生 | 不要 |
| 受講者数増加時 | 追加コスト大 | 再利用しやすい |
研修動画の作り方を実践するにあたり、避けて通れないのが制作の手間の問題です。企画・シナリオ作成・撮影・編集と、1本の動画を完成させるには想像以上の労力がかかります。
特に現場業務と兼務しながら動画を制作する場合、日常業務が圧迫されるリスクがあります。このデメリットを軽減するためには、既存の研修資料やウェビナーの録画を活用する方法が有効です。ゼロから作るのではなく、すでにある素材を編集して教材化するアプローチを取ることで制作負担を大幅に下げられます。
動画研修は受講者が一方的に視聴する形式が中心となるため、対面研修のようなリアルタイムの質疑応答やグループワークを行いにくい側面があります。
この課題に対しては、動画視聴後に研修レポートの提出を求めたり、アンケートやテストで理解度を確認したりする仕組みで補完できます。管理者からフィードバックを返す機会を設けると、受講者が一方的に視聴するだけで終わりにくくなります。動画研修は、理解度確認や振り返りの仕組みと組み合わせることで、双方向性の不足を補いやすくなります。
研修動画の作り方を検討する際、自施設で内製するか外部に委託するかは大きな判断ポイントです。それぞれに向いているケースを整理し、さらにLMSを活用した第三の選択肢も紹介します。
以下のような状況であれば、内製での研修動画制作が適しています。
内製の大きな強みは、現場の実情に即したコンテンツをスピーディに作れる点です。たとえば訪問看護ステーションの場合、自施設のカンファレンス映像や業務手順の実演動画は、内製ならではのコンテンツになります。一般的な基礎知識は既存の研修教材で補い、自施設独自のルールや理念、業務手順をオリジナル動画として作成すると、制作範囲を絞りながら実務に合った研修を整えやすくなります。
一方、外部委託が適しているのは次のような状況です。
外注費は内容や尺、撮影有無、修正回数によって大きく変わります。見積もりでは、撮影日数、ナレーションの有無、修正回数、納品後の著作権の扱いまで確認しましょう。外注する場合でも、企画・構成の段階では自施設の研修担当者が関与することが重要です。
研修動画の作り方を考えるとき、「制作」だけでなく「配信・管理」の効率も同時に検討すべきです。動画を作っても、受講者への案内、進捗管理、受講記録の管理が手作業では、管理者の負担は軽減されません。
| 管理業務 | 手動運用の場合 | LMS活用の場合 |
|---|---|---|
| 研修案内 | メール・チャットで個別連絡 | 対象者への自動送信 |
| 受講リマインド | 未受講者を確認し個別催促 | 期限前に自動リマインド |
| 受講記録管理 | Excelなどで手入力 | 帳票を自動出力 |
| 研修準備工数 | 複数工程が必要 | 3ステップで完了 |
LMSを活用すると、研修動画の配信、受講対象者の設定、期限管理、受講履歴の確認を一元化しやすくなります。動画を作っても、案内や進捗確認、受講記録の管理を手作業で行う場合、管理者の負担は大きくなりがちです。特に法定研修や新人研修を継続的に行う事業所では、動画制作だけでなく、配信後の管理まで含めて仕組み化することが重要です。
たとえば訪問看護ステーションで研修動画を運用する場合、一般的な基礎知識や制度理解は既存の研修動画で補い、自施設独自のルール、理念、業務手順はオリジナル動画として制作する方法があります。すべてを自施設で一から作るのではなく、既存教材と自施設で作る動画を役割分担すると、制作負担を抑えながら現場に合った研修を整えやすくなります。
eラーニングサービスやLMSを活用して研修を行う場合は、要件を満たすことで人材開発支援助成金の対象となる場合があります。定額制訓練では、経費助成率は基本60%です。対象となる訓練内容や申請書類、提出時期には条件があるため、導入前に厚生労働省の最新情報や管轄の労働局で確認しましょう。
1本あたり10〜15分程度が目安です。長時間の研修内容はテーマごとに分割し、受講者が集中力を保てる長さに調整しましょう。制度説明や手順確認など、内容が複雑な場合は、章ごとに短く区切ると学習しやすくなります。
必ずしも高額な機材は必要ありません。社内研修用であれば、スマートフォン、三脚、外付けマイクでも実用的な動画を撮影できます。スライド録画形式であれば、PowerPointとパソコン内蔵のマイクだけでも制作できます。まずは手持ちの機材で始め、必要に応じて追加しましょう。
内製の場合は機材費と人件費が中心で、既存のスマートフォンやPCを活用すれば初期費用を抑えやすくなります。外注の場合は、動画の内容や尺、撮影の有無によって費用が大きく変わります。なお、eラーニングサービスを活用する場合は人材開発支援助成金の対象となる場合があります。
研修動画の作り方は、目的の明確化から配信・運用まで6つのステップを順番に進めることが基本です。いきなり撮影を始めるのではなく、「誰に・何を・どのレベルまで」を明文化し、適切な形式と構成を設計したうえで制作に取りかかることで、学習効果の高い動画が完成します。
研修動画を継続的に活用するには、動画を作るだけでなく、配信、受講状況の確認、理解度チェック、記録管理まで含めて設計することが大切です。訪問看護ステーションなどで研修動画の制作や管理に課題がある場合は、一般的なLMSに加えて、医療・介護分野の研修管理に対応したサービスも比較してみましょう。
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