訪問看護の現場では、気管カニューレや在宅酸素療法、人工肛門・人工膀胱の管理など、特別な医療管理を必要とするクライエントを担当する機会があります。こうしたケースで適切に算定したいのが「特別管理加算」です。しかし、(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いや、介護保険・医療保険それぞれの算定要件が複雑で、正しく理解できているか不安に感じる管理者の方も少なくありません。
本記事では、訪問看護の特別管理加算の基本的な仕組みから、(Ⅰ)と(Ⅱ)の対象者・加算額の違い、介護保険と医療保険それぞれの算定要件、よくある疑問点までをわかりやすく整理して解説します。日々の算定業務や制度改定対応の確認に活用できます。
この記事でわかること
特別管理加算とは、訪問看護において医療的な管理が特に必要なクライエントに対し、計画的な看護や観察を継続して行う場合に、月1回、基本の訪問看護報酬に上乗せして算定できる加算です。対象となるクライエントの重症度や必要な医療処置の内容によって(Ⅰ)と(Ⅱ)の2区分に分かれており、それぞれ加算額が異なります。
特別管理加算(Ⅰ)は、より高度な医療管理を日常的に必要とするクライエントが対象です。具体的には、在宅麻薬等注射指導管理・在宅腫瘍化学療法注射指導管理・在宅強心剤持続投与指導管理(令和6年度改定で旧「在宅悪性腫瘍等患者指導管理」から再編された区分)のいずれかを受けている方、在宅気管切開患者指導管理を受けている方、気管カニューレまたは留置カテーテルを使用している状態にある方が該当します。
加算額は介護保険で500単位/月、医療保険では5,000円/月です。いずれも月1回の算定となります。医療保険の算定額は、厚生労働省の令和8年度診療報酬改定資料で確認しましょう。
介護保険の単位数は、厚生労働省の令和8年度介護報酬改定資料で確認してください。(Ⅰ)の対象者は、より高度な医療管理を必要とするため、加算額も(Ⅱ)より高く設定されています。
在宅麻薬等注射指導管理・在宅腫瘍化学療法注射指導管理では、麻薬の注射による疼痛緩和や抗がん剤の在宅投与を行っているクライエントの全身状態・副作用の観察が中心となります。気管カニューレの管理では、カニューレの固定状態の確認、気道内吸引、感染徴候の早期発見といった継続的なケアが求められます。
特別管理加算(Ⅱ)は、(Ⅰ)の対象には含まれないものの、在宅療養指導管理料のいずれかに該当する医療処置を受けているクライエントが対象です。在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅人工呼吸指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理、在宅肺高血圧症患者指導管理などが具体例として挙げられます。
また、人工肛門または人工膀胱を設置しているクライエント、真皮を越える褥瘡の状態にあるクライエント(NPUAP分類Ⅲ度またはⅣ度、もしくはDESIGN-R分類D3・D4・D5に該当)、医師の指示により週3日以上の点滴注射が必要な状態にある方も(Ⅱ)の対象となります。医療保険では、在宅患者訪問点滴注射管理指導料の算定の有無も確認します。
なお、令和8年度診療報酬改定(2026年6月1日施行)により、医療保険では在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている方も新たに(Ⅱ)の対象に加わりました。介護保険には適用されない点に注意してください。
加算額は介護保険で250単位/月、医療保険では2,500円/月です。ただし、対象状態や算定条件は告示・通知で補足される場合があるため、医療保険は令和8年度診療報酬改定資料、介護保険は令和8年度介護報酬改定資料を確認しましょう。
(Ⅰ)と(Ⅱ)の最大の違いは、対象となる医療処置の重症度と、それに応じた加算額の差にあります。以下の表で整理します。
| 比較項目 | 特別管理加算(Ⅰ) | 特別管理加算(Ⅱ) |
|---|---|---|
| 主な対象 | 在宅麻薬等注射指導管理など(旧・在宅悪性腫瘍等患者指導管理)、在宅気管切開患者指導管理、気管カニューレ・留置カテーテル使用 | 在宅酸素療法、在宅自己導尿、人工肛門・人工膀胱、真皮を越える褥瘡など |
| 介護保険の単位数 | 500単位/月 | 250単位/月 |
| 医療保険の算定額 | 5,000円/月 | 2,500円/月 |
| 重症度の目安 | 急変リスクが特に高く、高度な看護判断が必要 | (Ⅰ)以外で継続的な医療管理が必要 |
| 算定回数 | 月1回 | 月1回 |
なお、同一のクライエントに対して(Ⅰ)と(Ⅱ)の両方に該当する状態がある場合でも、算定できるのはどちらか一方のみです。通常は加算額が高い(Ⅰ)を優先して算定します。管理者としては、クライエントごとの医療処置内容を医師の指示書と照合し、どちらの区分に該当するかを正確に判断しなければなりません。
介護保険での特別管理加算は、訪問看護ステーション、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護において算定できます。ケアプランとの整合性が求められる点が、医療保険との大きな違いです。
介護保険において特別管理加算の対象となるのは、要介護認定を受けており、かつ主治医の訪問看護指示書に特別な管理が必要な医療処置が記載されているクライエントです。対象となる処置の範囲は、前述の(Ⅰ)(Ⅱ)の区分に準じます。
単位数は(Ⅰ)が500単位/月、(Ⅱ)が250単位/月で、いずれも月1回の算定です。ケアマネジャーが作成するケアプランに訪問看護が位置づけられていることが前提となり、訪問看護計画書にも特別管理加算の対象であることを明記する必要があります。介護保険の算定要件は、厚生労働省の令和8年度介護報酬改定資料に掲載される告示・通知を基本に、最新の事務連絡は令和8年度介護報酬改定資料も確認しましょう。
介護保険の対象者について、算定に必要な要素を以下にまとめます。
要支援1・2の認定を受けている方が利用する介護予防訪問看護においても、特別管理加算は算定可能です。単位数は介護保険の訪問看護と同様に、(Ⅰ)500単位/月、(Ⅱ)250単位/月となっています。
ただし、介護予防の対象者は比較的状態が安定している場合が多いため、実際に特別管理加算を算定するケースはそれほど多くありません。算定の際は、予防給付としてのケアプランに訪問看護が位置づけられていることを確認してください。地域包括支援センターとの連携も欠かせません。
介護保険での特別管理加算を算定する際には、いくつかの注意点があります。運営指導等で指摘を受けやすいポイントでもあるため、管理者として押さえておきましょう。
特に書類整備は運営指導等の重点確認項目です。訪問看護計画書に「特別管理加算の対象」である旨を明記し、毎月の訪問看護報告書にも管理内容・観察結果を具体的に記録しておくことが求められます。こうした算定根拠を示す記録は、不正請求の疑いを防ぐためにも重要な意味を持ちます。
医療保険での特別管理加算は、介護保険の対象とならないクライエント、たとえば要介護認定を受けていない方や、厚生労働大臣が定める疾病等に該当し医療保険の訪問看護を利用している方などが主な対象です。算定の仕組みには介護保険との共通点もありますが、請求区分や確認すべき通知・資料が異なります。
医療保険での特別管理加算の対象者および区分は、基本的に介護保険と同じ考え方です。(Ⅰ)は在宅麻薬等注射指導管理・在宅腫瘍化学療法注射指導管理・在宅強心剤持続投与指導管理を受けている方、在宅気管切開患者指導管理を受けている方、気管カニューレまたは留置カテーテルを使用している方などが対象です。(Ⅱ)は在宅酸素療法や在宅自己導尿、人工肛門・人工膀胱の管理、真皮を越える褥瘡、週3日以上の点滴注射が必要な状態などが対象で、令和8年度診療報酬改定により在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている方も加わりました。
算定額は(Ⅰ)が5,000円/月、(Ⅱ)が2,500円/月で、いずれも月1回の算定です。医療保険で特別管理加算を算定する場合は、対象となる状態や訪問看護指示書、訪問看護計画書・報告書の記録が算定要件と整合しているかを確認します。最新の算定要件は厚生労働省の告示・通知で確認しましょう。
| 区分 | 算定額(月額) | 確認事項 |
|---|---|---|
| 特別管理加算(Ⅰ) | 5,000円 | 対象状態・指示書・記録の整合を確認 |
| 特別管理加算(Ⅱ) | 2,500円 | 対象状態・指示書・記録の整合を確認 |
算定開始前には、対象状態、指示書、訪問看護計画書・報告書、請求区分が整合しているかを確認します。報酬改定や通知により取り扱いが変更される場合があるため、新規算定時や体制変更時には特に注意が必要です。
特別管理加算において、医療保険と介護保険の主な違いを整理しておきましょう。管理者として両方の保険制度に対応する場面は日常的に発生するため、混同しないよう明確に理解しておく必要があります。
| 比較項目 | 介護保険 | 医療保険 |
|---|---|---|
| 加算額(Ⅰ) | 500単位/月 | 5,000円/月 |
| 加算額(Ⅱ) | 250単位/月 | 2,500円/月 |
| 確認資料・届出 | ケアプラン、訪問看護指示書、訪問看護計画書、指定権者の届出様式を確認 | 訪問看護指示書、訪問看護計画書、訪問看護報告書、診療報酬の告示・通知を確認 |
| ケアプランの要否 | 必要(ケアマネジャーとの連携) | 不要(医師の指示書に基づく) |
| 主な対象者 | 要介護・要支援認定者 | 認定を受けていない方、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する方など |
特に注意が必要なのは、同一月内で医療保険と介護保険の切り替えが生じるケースです。たとえば月初に介護保険の訪問看護を利用していたクライエントが、月の途中で厚生労働大臣の定める疾病等に該当し医療保険に切り替わった場合でも、特別管理加算はどちらか一方でしか算定できません。請求事務でのミスを防ぐために、保険区分の変更が発生した際は速やかにスタッフ間で情報を共有する体制が重要です。
こうした制度改定や加算要件の知識をスタッフ全員が正確に理解しておくことは、算定漏れや返戻を防ぐうえで欠かせません。
「はぐくも」では、リハ職向け2,200本以上、ケア職向け740本以上、ナース職向け620本以上の動画コンテンツを備えています。研修準備は動画選択・対象者選択・期間設定の3ステップで完了し、研修案内・リマインド・受講履歴の帳票作成も自動化できます。制度研修の運用や導入費用の詳細を知りたい方は、資料請求ページからご確認ください。実際の操作感やコンテンツを確認したい方は、1ヶ月無料のフリートライアルをご活用ください。
併算定はできません。同一のクライエントが(Ⅰ)と(Ⅱ)の両方の要件に該当する場合でも、いずれか一方のみの算定です。通常は加算額の高い(Ⅰ)を優先して算定します。
たとえば気管カニューレを使用しながら在宅酸素療法も行っている方の場合、(Ⅰ)の対象要件である「気管カニューレ使用」に該当するため、(Ⅰ)を算定するのが原則です。
1人のクライエントに対して複数の訪問看護ステーションが関わっている場合、特別管理加算を算定できるのは1事業所のみです。どのステーションが算定するかは、事業所間で協議して決定します。原則として、主に特別な管理を実施しているステーションが算定するケースが多いですが、算定ステーションを変更する場合は関係者間で事前に確認・合意を取っておくことが重要です。
留置カテーテルを使用している状態は、特別管理加算(Ⅰ)の対象に含まれます。算定前には、訪問看護指示書、訪問看護計画書、訪問看護報告書に対象状態と管理内容が適切に記録されているかを確認してください。
医療保険で算定する場合は、訪問看護指示書、訪問看護計画書、訪問看護報告書、対象状態を示す記録を確認します。介護保険の場合は、これらに加えてケアプランや指定権者の体制届出・算定要件も確認してください。
報酬改定や通知により確認すべき資料が変わることがあるため、厚生労働省の通知、令和8年度診療報酬改定資料、指定権者の案内を定期的に確認しましょう。
訪問看護の特別管理加算は、高度な医療管理を必要とするクライエントへの継続的な計画的管理体制を評価する加算です。(Ⅰ)は在宅麻薬等注射指導管理(旧・在宅悪性腫瘍等患者指導管理)、在宅気管切開患者指導管理、気管カニューレ・留置カテーテルの使用などが対象で、介護保険では500単位/月、医療保険では5,000円/月を算定できます。(Ⅱ)は在宅酸素療法、人工肛門・人工膀胱、真皮を越える褥瘡、週3日以上の点滴注射が必要な状態などが対象で、介護保険では250単位/月、医療保険では2,500円/月を算定できます。
算定にあたっては、医師の指示書との整合性確認、訪問看護計画書・報告書への適切な記載が必要です。介護保険では複数ステーション利用時に1事業所のみ算定可(医療保険では要件を満たす各事業所で算定可能)、(Ⅰ)と(Ⅱ)の併算定は不可といったルールも正確に把握しておきましょう。報酬改定や通知により取り扱いが変更される場合があるため、医療保険は令和8年度診療報酬改定資料、介護保険は令和8年度介護報酬改定資料、指定権者の案内を定期的に確認しましょう。
特別管理加算の対象者や記録要件を現場に定着させるには、単発の説明だけでなく、スタッフが繰り返し学べる研修体制が必要です。1ヶ月無料のフリートライアルでは、実際の操作感やコンテンツを確認できます。機能や料金の詳細を知りたい方は、資料請求ページからご確認ください。
この記事のまとめ